それは「味の風」が出版されて間もなくの頃、それを下敷きにしたホームページを作りました。
青柳・小山裕久初めてのホームページです。
名前を、「座・日本料理」と言いました。
インターネット黎明期でもありませんが、今ほどの普及もなく、恐らくほとんど閲覧されることなく終わってしまったと思います。
けれども、今改めて読み返してみると、面白いものも沢山ございましたので、連載代わりに内容をぼつぼつこちらのページに載せていこうと思います。
それでは、どうぞ宜しくお願いします。
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「料理長挨拶:滋味涵養」
料理というものは、時代が持つ文化のレベルを反映するものです。
特に料理屋という空間で出す料理は、単なる食べ物を超えて、その文化の側面を色濃く表現しているものです。
私ども「青柳」も料理屋ですから、そうした点を踏まえて、
より洗練度の高い料理をお出しするように努力しております。
徳島という土地は素材にことのほか恵まれている土地でもあります。
でも、ただ何も考えずに自然のめぐみを享受しているだけでは、入り込めない世界があります。
自然というものは、ある瞬間にパッと窓を開けて向こう側を見せてくれる時があるのです。
そのときにさっとその窓から入り込んで、向こう側にあるものを確かめなければなりません。
私が最初に見えた向こう側は、鳴門の鯛でした。
鯛が見えてきてからは、他の素材も少しずつ見えて来つつあります。
この向こう側の世界。そこでしか表現できない料理を、つねに最高のコンディションで出す。
そのために、その調理法の完成度を高めていくこと。
これこそが私たち料理人が求めていかなければならない地点なのだと思います。
これらの調理法は、一見とてもシンプルです。
しかし、瞬間を切り取るようなシンプルな仕事というのは、
よほどの練達の料理人でなければ、むずかしいはずです。
既製の料理法があって、その料理法にあわせて素材を調達するというような思案法では、
新しいものは生まれてきません。
まず、すぐれた素材を探す努力をする。
次にその素材が本来持っているものをどうして引き出してやるかを考える。
そのためには素材そのものの語りかけに耳を傾けなければなりません。
そして、どこに手を差しのべればいいのかを探っていくわけです。
そのようにして引き出された調理法とその料理を、素材の良さを残しつつも洗練度の高い料理に仕上げる。
つまりは、“滋味涵養”こそ、私が今めざす境地といっていいでしょう。




